12 Jul, 2017

NYが誇る元グラフィティライターKRの“グラフィティライターのためのマーカー”KRINK。時代もフィールドも問わずに支持される理由

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 「ドリップ」といえばこの男、グラフィティマーカー「KRINK(クリンク)」のプロデューサーで、現代アーティストとしても活躍する「KR」こと Craig Costello(クレイグ・コステロ)である。もちろん、彼以外にもドリップで有名なグラフィティライターはいる。だが、故意に滴が垂れているようにみせるドリップという技法をグラフィティ、つまりアンダーグラウンドカルチャーから、アートやファッション、メインストリームの世界へと横断させた人物といえばKRの右に出るものはいないのではないだろうか。

 

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シルバーインクのドリップ・アート


 
 

ニューヨークのクイーンズ区出身。80年代の地下鉄に描かれたインクタグ、特に「ドリップ」の効いたものに魅了されてグラフィティの世界に足を踏み入れた。90年代に入り、地下鉄のグラフィティが一掃された頃、KRはサンフランシスコへ移住。そこで、独自のスタイルを追求し始める。「より大きく、流れに勢いのあるタグを描くにはどうすれば良いか」。さまざまな道具やテクニックを取り入れ、トライ・アンド・エラーを繰り返した。

 

ハンドメイドのインク作りに注力しだしたのも同様にこの頃。液垂れさせるために水分は多く、しかし、ストリートで映えるように色は濃く—。"Do-It-Yourself"(必要なものは自分で作る)スピリットと、自分で安い方法を見つけるというストリートスマートの生き様、その両方を持ち合わせていた彼だからこそ生み出せたのが、シグネチャーとして知られる「シルバーインク」だ。

 

そのシルバーインクのドリップが強烈に効いた「KR」タグで90年代後半頃からその名をストリートに轟かせた。98年、再びニューヨークへと戻り、街の壁やポストに大胆なシルバーインクのドリップ・アートを残した。そのスタイルは当時2000年前後のニューヨークの街の象徴として今尚語り継がれている。

 

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液垂れするが、色濃く


 
 

同じ頃、マンハッタンのローワーイーストサイドに若手アーティストたちのメッカ「Alife(エーライフ)」がオープン。当然、その強力な磁場の中にKRの姿もあった。 KRやIRAK、イリーガルからリーガルに渡る多様なメンツとSupremeのスケーターたちが混在、ダウンタウンカルチャーが絶頂の黄金期を迎えた頃であり、SACEやSEMZ、HAROLD HUNTERといった今は亡きKINGたちが集っていたのだ。

 

Alifeの創業メンバーは彼にこう提案した。「ストリートのキッズたちは、みんなお前のハンドメイドのインクを欲しがってる。ニーズは十分あるんだし、ボトル詰めして商品化したらいいんじゃないか? 手伝うからやってみないか」。支持された性能はもちろん、生み出す際に試行錯誤した「液垂れするが、色濃く」。そして、それを生み出したKRが、すでに叩き上げていたストリートで差異を見せるのに必須な“自分でやる”というマインド、そしてそれ然りで彼しか作ることのできないインク。カリスマをフォローする様に、彼しか作ることが出来なかったオリジナルのインクを誰もが欲しがった。

 

こうして、グラフィティマーカーKRINKは誕生する。Alifeとのコラボレーションは、彼らの予想通り大当たり。その後も、ストリートブランドはもちろん、マーク・ジェイコブスやトム・サックスといった著名人から、コーチやスタンダードホテルといったラグジュアリーブランドまで、幅広いコラボレーションを展開。2017年現在もKRINKの勢いは衰えることを知らない。

 

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15年以上経った今もKRINKが、クリエイティブな人々から支持され続けている理由はなにか。

 

「世代を越えた人々から愛されているのは、KRINKがリアルな歴史に基づいたもの、つまり、その時、そのコミュニティに渦巻いていた空気を吸ってきた人物たちが生み出したものであり、今尚そのスピリットを継承しているからに他ならないと思います」

 

そう答えたのは、今回の取材でも真摯に対応し、これまであらゆる分野の人々を橋渡ししてきたKRINKに長く従事するスタッフのダイアナ。性能はもちろんだが、何よりもリアルなスピリットがある。その純度が高ければ、人を魅了するのに “フィールドも時代も関係ない” のだ。

 
 

KRINK
https://shop.krink.com/

 

Photos: Courtesy of KRINK
Text by Chiyo

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