24 Apr, 2017

NYの「よろず屋」?昼間バーバー、時々ギャラリー。ローワーマンハッタン雑居ビルの一室にいるGogy Esparzaという人物

culture

NYはローワーマンハッタン、チャイナタウンとソーホーを隔てる大通り、Canal Street (キャナル・ストリート)に沿った雑居ビル群、その中のアパートの一室。ここは、バーバーでありギャラリーだ。

 
理容師でありアーティストでありキュレーター。いわばローワーマンハッタンの「よろず屋」とでも呼ぶべき、Gogy Esparza(ジョージー・エスパルザ)が所有するこのスペースは、バーバーから時にエキシビションスペース「Magic Gallery(マジック・ギャラリー)」に様変わりする。
このアパートの一室は現在に至るまでの3年間で、ビッグネームから新米のアーティスト、さらには職業・年齢・性別、全てが混在しあうダウンタウンシーンにおいて、日夜絶えず様々な人種の人々が行き交うプラットフォームになった。

 

 

久々のエキシビションを終えたということで、よろず屋を訪ねてみる。がらんどうにヴィンテージのバーバーチェアだけになった空間で、この日Gogyは、売れっ子映像作家である彼の友人Ben Solomon(ベン・ソロモン)の髪をカットしていた。

※Ben Solomon(ベン・ソロモン): アーティストであり映像監督。これまでにSupremeのショートムービーや、Beyonceの「NO ANGEL」のMVを手がけてきた。

 

 

小さな頃からいつか僕はNYに住むんだろう、っていうことは漠然と予想していた


 
 

H:今日はバーバーなんだね。まずはGogy Esparza(ジョージー・エスパルザ)という人物について教えてくれないかな。

 
G:僕はエクアドル人なんだ。エクアドルで生まれて、幼少期にマサチューセッツ州へ家族で引っ越してきた。そして理容師一家ということもあって、実は幼少期の頃から一ヶ月に一度はバーバー用品の買い付けでNYに来ていたんだ。それでかな、小さな頃からいつか僕はNYに住むんだろう、っていうことは漠然と予想していたよ。

 

 

 

H:アートシーンに入ったキッカケや経緯は?

 
G:まず、17歳になって大学進学でNYに移り住んだんだ。大学に通う資金はバーバーで働いて賄ったよ。それからすぐに、写真家David “Shadi” Perez(デイヴィッド・シェイディ・ペレス)(*)のアシスタントになったんだ。多分、これがアートといわれるシーンへ足を踏み入れるキッカケになった出来事だと思う。
Davidはブロンクス出身のプエルトリコ人で、A Tribe Called QuestやWu-Tang Clanなど、90年代のHIP HOPシーンやSupremeを撮っていた人。僕は彼の手伝いをするようになって、彼の影響を大きく受けたよ。だからまず、写真を撮ることから始めたんだ。
* Cypress HillやHouse of Pain など有名アーティストの世界的ヒットを記録したミュージックビデオを手がけ、他にもBiohazardやBestie Boys、New York Timesの映像も手がける。その一方でSupremeやStussyなどのブランドや、L'officielやThe Faceなど多くの紙面で写真家としても活躍する、アンダーグランドからオーバーグラウンドまで幅広く活動する人物。

 
H:その後、写真家Mark Borthwick(マーク・ボスウィック)(*) と出会うんだね?

 
G:そうだね。たった数週間だったが、カメラアシスタントというよりは、とにかく彼の家に入り浸って何でも手伝うような感じで過ごしたんだ。彼の作品作りのプロセスを間近で見られたのは、本当に素晴らしい経験だったね。

* Pupleやi-Dなどといった雑誌とのコントリビューションや、数々のファッションブランドとのコラボレーション、そして広告写真など、幅広くも自在に アートとファッションを横断する写真家。さらに、音楽・映像・詩までメディアにとらわれることなく表現を追求する多才なアーティストとしても注目されている。

 

 

自分の力でこのスペースを所有することで、僕はコミュニティを作っていきたい


 
 

H:現在、アーティストであり、理容師であり、キュレーターでもあるGogyの一日を教えてくれる?

 
G:まず、ジムにめちゃくちゃ通っているよ(笑)。その後ガールフレンドとフェイスタイムをして、週に3日くらいはここでヘアカットを。休みの日なんかはまるで野良犬のように、目的も無くブラブラと街中を彷徨うんだ。コーヒー飲んで、タバコ吸って、写真撮って…皆はくだらないっていうかもしれないけど、俺はそうやって生きてきたからね。

 
H:ストリートカルチャーの聖地と言っても過言ではない、ここローワーマンハッタンで生活することはやっぱり重要なのかな?

 
G:少なくとも俺にとっては全てだ。ニューヨーク・スクール(*1)なんかもここから始まったしね。今ではその面影は無いけど、当時は手の届く価格でスタジオが借りられる場所だった。ニューヨーク・スクールのメンバーにはブルーカラー層も多く所属していたんだ。彼らはそれまでのアートの風潮を、ここローワーマンハッタンから変えたと思うよ。そんな50年~60年代を経て、その後ウォーホルやバスキアが登場した。90年代にはアーティストのDash Snow(ダッシュ・スノウ)が、そしてそのSnowが在籍したグラフィティクルーIRAK(アイラク)(*2)もここで生まれた。そんなローワーマンハッタンは、間違いなく俺を形作った場所さ。
*1 ニューヨーク・スクール (New York School) は1950年代および1960年代にNY市で活動していた詩人・画家・ダンサー、およびミュージシャンによる非公式のグループ。
*2 伝説的なNYのグラフィティ集団。危険を冒してまでグラフィティを描き続ける攻撃的なスタイルは悪名高く、質・量ともにトップクラスのライターで構成されている。ストリートブランドalifeをはじめとし、後述のAaron Bondaroffなどとも密接な関わりを持っている。

 
H:そんな場所で理容師、アーティスト、そしてキュレーターでもあるGogy。いうなればローワーマンハッタンの「よろず屋」ですが、その存在でいることの難しさってある?

 
G:自分のスタイルを分かってもらうのが難しいことの方が多いな。どうしてこんなスペースを持っていて、理容師をやっているのかってことを聞かれる。なんでって聞かれても、それはもちろん生活費を稼ぐためなんだけど。しかしバーバーとギャラリーが同じ空間にあることで、新しい出会いが生まれている結果も事実。自分の力でこのスペースを所有することで、僕はコミュニティを作っていきたいんだ。

 
IRAKは良い例だと思う。自分たちの力でコミュニティを形成していった。彼らをリアルタイムで見ることは出来なかったんだけど、存在を知った時は「Holy FxxK!ヤバいじゃん」って思ったね。だから僕はこのスペースを使って、ヘアカットはもちろん、友人のエキシビションやイベントもやっていこうって思ったんだ。このスペースを独りよがりなものにしたいとは思わなかったから。

 

 

 

「何かやろうぜ」って言い合える関係であるということは大切にしている


 
 

H:このバーバー兼ギャラリーとして使っているこのスペースを持つキッカケは?

 
G:ここに移る前は別のバーバーで働いていたんだけど、他人と一緒に働くことには正直少し嫌気が差していたんだ。自分のやりたいことが出来て、それを同じ場所からコミュニティを作って発信していきたいと思ったのがキッカケだね。当初はバーバーと平行して、このスペースを自分のアーティストスタジオにしようと思っていたんけど、ここなら周りの素晴らしい奴らとショーも出来るじゃないかってことで、Magic Galleryを始めたんだ。

 
H:記念すべき一回目のエキシビション「NEW NEW(ニュー・ニュー)」は、同じく写真家でありアーティストのPeter Sutherland(ピーター・サザーランド)とMaggie Lee(マギー・リー)、そして貴方との豪華なトリプルネームだったんだよね。

 
G:当時は、Aaron Bondaroff(エーロン・ボンダロウフ)(*1) もKNOW-WAVE(ノー・ウェーブ) (*2)を立ち上げていなかった頃だね。「NEW NEW」は我ながら素晴らしいものだった。他にこういう発信できるコミュニティが無かったからね。

*1 Supreme創成期のメンバーを経て、2001年に自身のブランド(aNYthings)を立ち上げ、2008年にはLAでアートギャラリー(OHWOW、現在はMORAN BONDAROFF)をオープンするなど、カルチャーシーンで広く活躍してきた人物。インターネットラジオ、KNOW WAVEの仕掛け人でもある。
*2 AaronがLAではじめたインターネット・ラジオ局。音楽、トーク、映画、出版物など幅広い(自由に)トピックやカルチャーを扱い、これまでにLA・NY・ロンドン・モスクワ・東京での配信を行ってきた。カルチャーを発信するプラットフォームとして存在している。

 
H:エキシビションを行うアーティストはどうやって選んでいるの?

 
G:単純に俺がその人の作品を好きかどうかっていうのは勿論のことだ。君がどんな人かってこともそうだよね。その人が一生懸命で、それでいてクソ野郎じゃなければ良いかな。「何かやろうぜ」って言い合える関係であるということは大切にしている。

 

 

君のことを君の隣にいる奴より少しでも多く知っていたら、手助けする


 
 

H:これから先、より若い世代のアーティストが台頭してくると思うけど、Magic Galleryとしてはどのように携わっていきたいのかな?

 
G:コラボレーションは素晴らしいことだという考えは今も変わらないんだけど、実は今後Magic Galleryとしてのスペースは止めようかなと思っている。
ギャラリー発足からの3年間、このプラットフォームとコミュニティを作り上げることに自分の全てを捧げてきた。でも今は、アーティストとしての自分にフォーカスをしている時期でもあって。ここはこれから自身のスタジオに変えていこうと思っているんだ。だけど、心配しないで。バーバーとしてのドアは開けておくから。ここに髪の毛を切りに来てくれる友人やお客さんとの間には、すでにしっかりとしたコミュニティが出来上がっているからね。

 
H:最後に、現在動いてるプロジェクトを教えてくれないかな。

 
G: LAから始めるソロエキシビジョンがあって、その後はNY、アムステルダム、そして日本でも予定しているよ。あとは先日レバノンでドキュメンタリー映画を撮ったんだけど、そのプレミアもNY、ドバイ、ベイルートの3都市で年内に開催する予定だよ。

 
勿論、君のことを君の隣にいる奴より少しでも多く知っていたら、手助けする。それが僕らの役目だし、レガシー(伝統的なもの)が引き継がれてきた所以だから。だから今後もコラボレーションが無くなるわけではないんだ。

 

 

Magic Gallery
https://www.facebook.com/magicgalleryofficial/
175 Canal Street, 5th Floor, New York, NY10013

Editor Stoop Kid

Editor Kohei Kawashima

page top

page top>